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仙台地方裁判所 昭和63年(わ)355号 判決

本籍

宮城県石巻市字水押四三番地の五

住居

仙台市南光台四丁目一二番二九号

会社役員

佐藤洋一

昭和二四年四月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官向井壯出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、樋口幸男と共同して、仙台市北目町二番三四号富士幸ビル外三か所に事務所を置いたうえ、山幸青果の名称で出張販売による青果物小売業を営み、その利益を同人とおおむね折半していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和五九年分の自己の所得金額が、実際は三七七二万八三五七円で、これに対する正規の所得税額が一五八三万四四〇〇円であるのに、同六〇年四月二四日、同市上杉一丁目一番一号仙台北税務署において、仙台北税務署長に対し、その所得金額が四四三万二八八三円にすぎず、これに対する所得税額が二八万九三〇〇円になる旨の虚偽過少の所得税確定申告書(昭和六三年押第一二〇号の一)を提出し、もって、不正の行為により同五九年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一五五四万五一〇〇円につき所得税を免れ

第二  同六〇年分の自己の所得金額が、実際は四二七七万七〇七〇円で、これに対する正規の所得税額が一八五八万四七〇〇円であるのに、同六一年三月一三日、同税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五六九万八二二二円にすぎず、これに対する所得税額が五〇万六七〇〇円になる旨の虚偽過少の所得税確定申告書(同押号の二)を提出し、もって、不正の行為により同六〇年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一八〇七万八〇〇〇円につき所得税を免れ

第三  同六一年分の自己の所得金額が、実際は八〇三六万九三一二円で、これに対する正規の所得税額が四二五三万一七〇〇円であるのに、同六二年三月一四日、同税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五六二万〇八〇〇円にすぎず、これに対する所得税額が五四万〇三〇〇円になる旨の虚偽過少の所得税確定申告書(同押号の三)を提出し、もって、不正の行為により同六一年分の正規の所得税額と右申告税額との差額四一九九万一四〇〇円につき所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書、大蔵事務官に対する質問てん末書(一〇通)及び被告人作成の上申書

一  樋口幸男(謄本)及び中村和彦の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の調査書、脱税額計算書説明資料、売上金額調査書、仕入金額調査書、期末棚卸商品調査書、期首棚卸商品調査書、荷造運賃調査書、損害保険料調査書、減価償却費調査書、除却損調査書、給料賃金調査書、現場経費調査書、事務所経費調査書、賃借料調査書、共同負担費用調査書、佐藤洋一負担の福利厚生費等調査書、樋口幸男負担の交際費等調査書、取得資産調査書、利子所得調査書、短期譲渡所得調査書、雑所得調査書及び源泉徴収税額調査書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五九年一月一日 至昭和五九年一二月三一日)

一  押収してある昭和五九年分の所得税の確定申告書一枚(昭和六三年押第一二〇号の一)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六〇年一月一日 至昭和六〇年一二月三一日)

一  押収してある昭和六〇年分の所得税の確定申告書一枚(同押号の二)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六一年一月一日 至昭和六一年一二月三一日)

一  押収してある昭和六一年分の所得税の確定申告書一枚(同押号の三)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとする。そして、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、いずれも所得税法二三八条二項を適用して、それぞれ免れた所得税の額に相当する金額以下で処断することとしたうえ、刑法四八条二項により右の各金額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年及び罰金一八〇〇万円に処する。なお、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、懲役刑については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 本郷元 裁判官 村上博信 裁判官 宮本孝文)

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